動かない時計

 天才と狂人は紙一重って言いますけどその言葉ほど私の博士に当てはまるものはないと思います。
 あれはいつでしたか「君、水の威力は凄いということを今から証明しよう」などと言って消防車のホースを一人で抱えて放水した結果3メートルほど吹っ飛んで全治一ヶ月の病院送り、おかげで周りからは「未確認飛行博士」なんて噂されるように・・・つい数ヶ月前には靴にローラーとエンジンをつけて「喜べ、これで人類の移動速度は上がるぞ」と言い残してそのまま一直線に進んで曲がり切れず塀に激突して足を骨折、おかげで「未確認歩行博士」なんて言われる始末で・・・
あぁ、スイマセン、どうでもいい話でしたね。

ユニーク? まぁ確かにそうかもしれません。でもそれは傍観者だからそう言えるだけで実際こんな
行動力のある人が身近にいると気苦労が多くて神経性胃炎になりますよ。
 だって想像してください、コーヒーを注ぎながら考え事をして全部床に流してしまったり考え事に夢中になって食事をするということを忘れて倒れたり外を歩けばいつも電柱に鼻先をぶつけたりと、
その行動はおおよそ常人には理解出来ないようなことばかり、まぁそれでも辞めないのは何だかんだ言っても好きなんですね、この仕事が。

 ・・・ウワサ? そりゃもう沢山ありますよ。学会を追放された腹いせに返り咲きを狙っているとか
某巨大企業がスポンサーについているとか特許の利益で発明をしているとか。でも所詮ウワサはウワサです。流言が事実であったことはないわけですし百匹目のサルなんてことがあり得るなら博士は今頃大統領にでもなってます。
「火のない所に煙は立たず」なんて言葉も最近じゃ換気扇とか色々と便利なものがありますし、
「煙があるから火もあるハズだ」とは必ずしも言い切れません。
世の中には煙を立てることを生業としている人もいますから。

 まぁ、そんな博士ですから「止まることのない時計を開発したぞ」と言った時にもあまり期待はしていませんでした。
「この時計はブレゲのマリー・アントワネットとは全く対極の方向を目指したいたってシンプルな時計だ、かの中大兄皇子が呂才の漏刻を作らせた時に『刻を支配するモノは時空をも支配することが出来る』という思想があったからだそうだが、この時計さえあれば時空を支配することが出来るのだよ」
なんて前置きもいつものことなので何も言わずに黙って聞いていましたけど。

「―――ということだ、うむ、こっちへ来なさい。これが永遠に止まらない時計だ」
そう言って指さしたモノを見ると数メートルの棒が垂直に立っていました。
そしてその周りには棒を取り囲むように時計の文字盤を模したものが。

「博士、もしかしてこれは」
「時に君、ナスカの地上絵の横にあれと同じ絵柄を縮小した原画のようなモノが見つかっていることはあまり知られていない。そう、これもそれと同じことだ、さぁ本題に入ろう。君、上を見たまえ」


「・・・博士、日照権って知ってます?」

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