ニヤリ
2006 / 11 / 30 ( Thu )
14:20 駅前銀行の近くの車内
「いいか、計画の確認をするぞ。
まず三人揃って素早く突入する、そしてオマエが拳銃を一発発射して監視カメラを破壊、
で、俺が金を要求する、オマエたちは周りを監視しろ」
「了解」
「りょーかいっ!」
「俺たちが一千万円を返済するには、もうこれしか残されてない。
この借金を返したら、故郷に帰って三人でゆっくり暮らそう。
―――オマエら、気を入れて行くぞ!」
14:15 駅前銀行の支店長室
「・・・はい、そうですか・・・はい、えぇ、かしこまりました。
では、明日の午後、全額用意でき次第こちらから連絡いたします、
はい、失礼いたします」
「・・・支店長、どうでしたか?」
「ダメだ、やはり解約するらしい。
・・・このままだと一千万円の着服がバレてしまう」
「別の人の口座から横流しすれば」
「数千万を預金していて、しかも管理を全てこっちに任せっきりだったのはこの人しかいないんだ。
―――あぁ、どうすりゃいいんだ!」
14:10 駅前銀行へ向かう道路
「いやぁ、まさか、ここまで来るとはねぇ。
一千万円なんて大金が手に入るなんて。人生って分からないよなぁ。
さぁて、とりあえず今日は番号の確認と、本人の身分証明だけか。
気合い入れていくぞー」
14:30 駅前銀行内
「42番でお待ちのお客様、一番カウンターまでお越し下さい」
ウィィィン。
「オマエら、静かにしろ!」
パーン!
「よし、監視カメラに命中したぞ」
「静かにしろ、今監視カメラを破壊した! 静かにしていれば、危害は加えない。
おっと、警察に連絡しようとしたら、容赦なく撃つ!
さぁ、さっさとこのカバンに金を詰めるんだ! 早くしろっ!」
14:31 銀行の応接室
「では、確認させていただきます」
「―――おや、何だか外が騒がしいですね。
もしかして銀行強盗でも入ったとか?」
「まさか、おおかた誰かが爆竹でも鳴らしたのでしょう。
おーい、鈴木君、ちょっと見てきてくれないか?」
「はい、分かりました」
14:32 銀行内
「さっさとありったけ詰めるんだ。そうだな、最低でも一千万円は詰めろ」
「な、お、オマエら何してるんだ!」
「黙れ、見りゃ分かるだろ、我々は銀行強盗だ」
「長男のニ・ホイ、次男のヤ・ホイ、そして三男のリ・ホイ」
「三人揃って」
「三波春夫でござい」
「おいおい、三波春夫は三人もいないよ」
「俺たち犯人が騒いでどうするんだよ」
「あ、もっと別のボケの方が良かったかな」
「でも場の空気悪いからなぁ」
「だから静かにしろって言ってんだろ!」
14:33 応接室
「・・・どうやら銀行強盗らしいですね」
「そんな! 僕の一千万円はどうなるんです!」
「しっ、声が大きい、ここは黙っていれば大丈夫ですよ、まさか気付くわけがありませんから」
「・・・なるほど、そりゃそうだ」
「この調子だと鈴木君が人質に取られそうですね」
「いいんですか?」
「我々はお客様の安全を第一に考えていますので。さて、今の内に警察に連絡しておきましょう」
14:33 銀行内
「うちにはそんな一千万もの大金はありません」
「ないわけないだろ、銀行に金がある、これは常識だぞ」
「最近は不況なんです。だからそんな大金なんてありません!」
「もういい! さっさとここの責任者を呼べ!」
14:34 支店長室
「支店長、どうやら銀行強盗が侵入したようです。
犯人たちは一千万円を要求しています」
「何だって! ・・・いや、待てよ。うむ、これは使えるぞ」
「ど、どういうことですか?」
「いいか、私たちが着服した一千万円、これは彼ら強盗によって盗まれたのだ。
そうと決まれば話は早い。さっさと一千万円を渡しなさい、
そして警察には二千万円盗まれたと報告するのです」
「しかし支店長、我が銀行にはそんな大金はありませんが」
「君は何かを忘れていないかい。今応接間じゃあ一千万円の当りくじの確認をしているところなのだよ」
「なるほど、それを上手く利用するわけですね」
「あぁ、どうせ何もしなくても刑務所行きは確実なんだ、さぁ、男だったらドンと行って来い。私は当りくじの方をなんとかする」
「私がですか? いや、私女なんですけど」
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと―――」
「支店長、犯人たちが来いと言ってますが」
「何だって?」
「男だったらドンと行くんですよね、支店長。こっちは何とかしますから、なるべく引き延ばしておいて下さいね」
「引き延ばせって・・・」
14:35 銀行内
「さぁ、さっさとありったけの金を袋に入れろ!」
「と、とりあえず、お茶でもどうです」
「そこでまったりする必要ねぇだろ。こっちは急いでるんだっ」
「・・・スイマセン、小切手ではどうでしょう」
「どこの銀行強盗が小切手で満足するんだよ、現金で寄こせ」
「じゃ、じゃあ宝くじなんかどうです?」
「ふざけてんのか?」
14:36 応接室
「スイマセン、ちょっといいですか」
「おぉ、副支店長、どうかしましたか?」
「ちょっと今銀行強盗が来てまして、一千万円を寄こせと言っているのですが、あいにく今は少ししか置いていないのです。そこでお願いですが、貴方様のその当りくじを貸して頂けないでしょうか?
いや、もちろん一千万円はこちらで立て替えさせていただきます。何なら利子を付けてもかまいません。
お願いです、我が銀行を助けていただけないでしょうか」
「・・・ちゃんと後で払ってもらえるんでしょうね」
「それはもちろんです。利子をつけてお返しいたします」
「分かりました。僕なんかが助けになるのなら喜んで」
「ありがとうございますっ!」
14:38 銀行内
「まぁタバコでも」
「だから何で証拠を残すような真似をするんだよ」
「そうだ、もれなくアンケートにお答えいただくとこの貯金箱を」
「そろそろ撃つぞ」
「支店長―――お待たせしました、これが当りくじです」
「おぉ、そうか。・・・申し訳ありませんが、この銀行には今大金はありません、ですからこの一千万円の当りくじを差し上げますから、どうかご容赦を」
「それは証明出来るのか?」
「証明は出来ません、でももしここで札束を出したとして、貴方はニセモノだと疑うのですか?」
「うぅむ」
「兄貴、どうやら誰かが警察に通報したみたいです!」
「何だと!
・・・仕方ねぇ。おい、そこのラックの新聞を片っ端から持って行け!
おい支店長、アンタも相当運が良いな」
「それはどうも」
14:50 逃走中の車内
「兄貴、やりましたね。これで借金返済ですよっ!」
「待て、今確認しているところだ。
えぇっと、俺は宝くじなんて買ったことないから分からんが、
とりあえずここの番号が合っていたらいいんだよな」
「確かそうだったような気が」
「・・・あ、あったぞ! 確かに一千万円だ」
「さすが兄貴、スゴイ!」
「ハッハッハ、もっと褒めろ」
15:05 銀行内のトイレ
(いやぁ、一時はどうなることかと思ったけど、
まさか偽造した当りくじで一千万円もらえるとはねぇ。しかも利子つきで。あぁ、ホント僕ってラッキーだなぁ!)
15:10 銀行内の廊下
「支店長、何とか首の皮一枚が繋がりましたね」
「あぁ、ギリギリだった」
「でも、あの当りくじ、ちゃんと利子も付けないといけないんですよね」
「なぁに、あとは保険が何とかしてくれるさ、
何せ盗まれたのは二千万円だからな」
「そう・・・ですね、まぁ何にせよ良かったですね」
「あぁ、銀行強盗様々だな」
16:54 応接室にいた男の事情聴取
「何だかんだで大騒ぎしてましたけど、結局彼らは何も盗んでいきませんでしたよ。
盗んだのは偽造された宝くじ一枚だけですし」
「いや、ヤツらはとんでもないものを盗んでいきました」
「とんでもないもの?」
「そう、私の休暇ですよ!」
「・・・ご愁傷様です」
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