これはSFではありません

世界は60%の嘘と30%の退屈で出来ている。
オレたちは今その30%の退屈をどうやり過ごすか考えていた。
人は退屈だとロクでもないことを考える、空腹だと悪いことを考える、
貧すれば鈍する、不幸は思考能力を低下させる、空腹も然り。
そしてオレたちは飢えた狼のようにギラついた目を光らせながら辺りをうかがっていた。

 もはや不幸、としか言いようのない事故だった。
ワープの座標軸のインプットミス。
で、その結果オレたち三人を載せた宇宙船は目的地からちょっと離れたここにいるわけだ。

「全く、オマエがワープ操作を間違えたりするからだ」
「あの場所でカップ麺を喰うヤツがあるか」
「ストローで味噌汁を飲んでいたオマエに言われたくはない」
「大体なぁ」
「暴れるな、空気だって無尽蔵にあるわけじゃないんだ」
「そりゃ・・・そうだけどさ、でもここまでギリギリなのはどうかと思うぜ。なぁ、もういっそ帰還するか?」
「帰還するほどの燃料があるならな。ま、帰っても裏切り者で処刑されるのがオチだ」
「そうだな、それにそんな燃料があるならこんなことなんかしちゃいない。
オレたちにはこのまま進むしかないんだ、しかし問題は燃料が持つかどうかだな」

 そう、このまま進んでも敵艦隊に突っ込むギリギリのところで
燃料が尽きる計算になる。
「全く、本部のヤツらもバカなことを考えたもんだ――」


 オレたちの惑星は数年前から他の惑星と戦争をしている。
先に仕掛けてきたのは向こう、ある日突然現れた宇宙船によって
小さな都市の一つが文字通り姿を消した。そう、塵一つ残さずに。
オレたちはすぐに反撃をした。しかし相手の圧倒的ともいえる包囲網と、
殺さずに生きたまま捕まえるという敵の行動によって、
だんだんと前線に立つ兵士はいなくなり、戦況はどんどんと悪化していった。
そのうちにオレたちの惑星は完全に包囲されてしまい、
どうしようもないぐらいの手詰まりをおこしていた。
勿論降伏はしようとした、だが交渉に出かけた人達が誰も帰ってこないのだ。
これによりオレたちの運命は二つに絞られた。

「もはや我々は捕まるか、戦って滅びるしかない」

いつの間にかオレたちは戦争の泥沼へと足を踏み入れていた。
いや、もう抜け出せないところまで来ているのかもしれない。
ところで捕まえられた彼らはどうなっているのか、
それはオレたちには分からないが、多分奴隷か見せ物になっているのだろう、
食料として喰われているというウワサもある。
どちらにしてもあまりいい扱いは受けてなさそうだ。

そんな戦況でオレたちに課せられた任務、それはもはや残された最後の手段だった。

「君たちには敵の主力戦艦に突撃して自爆して欲しい。玉砕覚悟で突っ込むのだ」

 多分本部の奴らもどうしようもなく退屈だったのだろう。
じゃなければこんなイカれた作戦なんて考えるハズがないのだ。
片道の燃料、ギリギリの食料、そして3人という最低限の人数。
「国は民があってこそ成り立つ、民をないがしろにする国は遅かれ早かれ滅びるのだ」
 遙か昔にそう言った哲学者がいたが、そう考えるとこの惑星はもうそろそろ滅びるのかもしれない。

「おい、そろそろ敵のレーダーに映るころだ、スピードを上げるぞ」
「艦長、やはり燃料がギリギリ足りません、このままだと敵のど真ん中で止まります!」
「そうか、万事休す、だな。――オマエら、準備だけはちゃんとしとけよ」
「そんな、諦めるんですか!」
「いいか、もしここでみっともなく暴れてみろ。
敵に『何だ、こんな程度の敵だったのか』と思われるんだぞ。
ここは最後までどっしりと構えるべきだ・・・っておい、何処へ行く気だ」
「ちょっとベッドのエロ本隠してきます」
「あ、じゃあ僕もダッチワイフとかを捨てて・・・」
「オマエら何積み込んでんだ」
「大丈夫、艦長の『必殺熟女シリーズ』も捨てておきますから」
「2番目の引き出しの奥に入ってるんですよね」
「何で知ってんだソレ」

 予想通り、というべきか、燃料切れの宇宙船の中、
オレたちは抵抗することなくあっけなく捕まった。
捕まったオレたち3人は彼らに連れられるまま敵の宇宙船の一室に案内された。
そこで待ちかまえていたのは一人の宇宙人だった。
背格好はオレたちとそんなに変わりがない。
ただ、体中に見え隠れする傷痕が言いしれぬ恐怖を感じる。

そしてその横には数々の痛々しい道具が並んでいた。
多分これでオレたちは拷問されるのだろう。
そう考えると気分が悪くなった。

「こんにちは、皆さん。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、何もしませんから」
「近所の歯医者もそう言ってたな、でも嘘だったけど」
「我々にとって攻撃されることはこの上ない幸福、そう痛みこそ快楽なのです。
しかしながら我々は攻撃するのは好みません。むしろ苦痛ですらあります。
そこであなた方に目を付けたわけです。
あなた方たちは他者を攻撃すること、他人を排除することに関してはもはや天才的です。
自分たちの星をあそこまで痛めつけることの出来る種族なんて
宇宙広しと言えどもなかなかいませんよ。
その能力を我々に対して使ってもらって何が悪いのですか。
だから皆さん、横にあるムチで我々を叩くのですっ! さぁ早く!」



23:51 | 妄想的雑記 | comments (2) | trackbacks (0) | page top↑
何か後ろ向きばっかりだな | top | ヒットマンじゃありません

コメント

#おじゃまします
はじめまして!いや、笑いましたー。

また遊びに来ます。

お邪魔しました。
by: 銀きのこ | 2007/09/01 15:26 | URL [編集] | page top↑
#
>銀きのこさん

これはどうも、初めまして。
感想ありがとうございます。

こちらはいつでもお待ちしておりますので、気が向いたときにでもどうぞ。
by: Kai | 2007/09/02 00:59 | URL [編集] | page top↑

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