三つの願い
2006 / 01 / 14 ( Sat )
いつものように男は会社からの帰り道をとぼとぼと歩いていた。
横には誰もいないしマンションへと帰っても誰もいない。最初は独り身の寂しさが身に染みたのだが、人間の慣れとは恐ろしいもので数年たった今では寂しさも少し薄らいでしまったらしい。
人間の適応能力って凄いなぁなどと感心しながら歩いていたせいか、何か固いものに足をとられ、バランスを崩してしまった。
男は振り返る。原因は足元にあった小ビン。道端にポツンと置かれたそれはひどく場違いな雰囲気を醸し出していた。
男はまるで吸い寄せられるようにその小ビンを拾う。自分でも何故拾ったのかすら分からないようだ。何か超自然的なものによって導かれたのだろうか。男はオカルトの類なんてこれっぽちも信じちゃいなかったのだが。
自宅に帰った男はその小ビンを眺めてみる。よく海外の映画でよく見る、海に流すメッセージボトルのような感じだ。
大きさも小ぶりでちゃんと栓までしてある。中身は・・・汚れていてよく見えない。しかし不思議なことに傷が一つもなかった。これだけ汚れているのに。何故だろう? いくら考えても答えは出ない。
まさか、栓を抜くと悪魔か魔神でも出てくるのだろうか、それとも何かを封印していたのだろうか?
まぁいい、オレには関係ないことだ。そう考えた男は栓を抜いた。と、突然辺りに漂う煙。咳き込む男、と、ふと気づけば目の前に一人の子供のような姿をした人物が立っていた、人物、と評したのは、その子供から発せられる雰囲気がまるで成熟した大人そのものだったからである。
それにその服装、それは現実世界では見たこともないような服装だった。そう、ゲームなんかではよく見るような、機能性よりもデザインを重視した服装である。
「だ、誰だオマエは!」
思わず叫ぶ男にゆっくりと言い聞かせるように答えるその子供。
「私は、妖精です。このビンに封印されてしまったのですが、偶然にもアナタがこの栓を抜いてくれたおかげで外に出ることが出来ました。お礼にアナタの願いを三つだけ叶えましょう」
「・・・マジで?」
「マジです」
男は目をこすり、二、三度首を振る。だが目の前の光景は変えようもない現実だった。
「じゃ、じゃあえっと、どうしようかな・・・?」
「だったら願い事を言ったほうがいいですよ」
悩む男に妖精はそっとささやく。しかし男はなおも悩んでいた。せっかくのチャンス、最大限に生かす言い願い事はないかと必死で若い頃に読んだ小説の内容を思い出そうとしていた。
「・・・何かいい願い事は・・・ないだろうか?」
「お金とか、美女とか、色々ありますよ」
「うーん・・・、よし、それじゃあ願いを増やして」
「それは無理です。昔それをやった知り合いがひどい目に会いましたから・・・」
そういうと妖精は悲しそうな顔をした。多分よほどのことだったのだろう。
「あ、ちなみに願いはあと一つですよ」
「へ?」
「だってさっき私に聞いたじゃないですか?
『どうしようかな?』
『いい願い事はないかな?』と。ちゃんと叶えてあげましたよね、お忘れですか?」
意地悪く妖精は言い放つ。あっけに取られる男、なおも続ける妖精。
「さぁ、早く最後の願いをお願いします、そして私を自由にして下さい」
「うぅ・・・」
男は悩んでいた、出せと言われれば逆に出ないのだ。いつもなら簡単に出るのだが。
「・・・よし、分かった。それじゃあ10分前に戻してくれ」
「10分前ですか? 分かりました、ではその願いを叶えましょう」
「あぁ、そうしてくれ」
そう言いながら男はあることを考えていた。
(馬鹿な妖精だ、10分前に戻ってもう一度願いを言えばいいだけの話じゃないか、全く、手間をかけやがって・・・)
そんなこととはつゆ知らず、妖精は何の疑いも持たずにその願いを叶えようとして何事かを呟く。突然部屋は光に包まれた。
そして話は10分前に戻る。
マンションの自分の部屋の中に男は立っていた。
「・・・? 何だろう、何か大事なことを忘れているような気がするなぁ・・・。そうそう、このビンを開けようとしたんだった」
男は栓を抜く。と、突然辺りに漂う煙。咳き込む男、目の前に現われるのはさっきの妖精。
「だ、誰だオマエは!」
「私は、妖精です。このビンに封印されてしまったのですが、偶然にもアナタがこの栓を抜いてくれたおかげで外に出ることが出来ました。お礼にアナタの願いを三つだけ叶えましょう」
「・・・マジで?」
「マジです」
「じゃ、じゃあえっと、どうしようかな・・・?」
「だったら願い事を言ったほうがいいですよ」
「うーん、何かいい願い事は・・・」
あれから果たして何年経ったのだろうか。いや、何年だなんてそんなことは男には全く分からないだろう。だって男にはまだ10分しか経っていないのだから。
こうして彼は今もずっと同じことを繰り返している。そう、何度も、何度も。
「うーん、何かいい願い事は・・・」
横には誰もいないしマンションへと帰っても誰もいない。最初は独り身の寂しさが身に染みたのだが、人間の慣れとは恐ろしいもので数年たった今では寂しさも少し薄らいでしまったらしい。
人間の適応能力って凄いなぁなどと感心しながら歩いていたせいか、何か固いものに足をとられ、バランスを崩してしまった。
男は振り返る。原因は足元にあった小ビン。道端にポツンと置かれたそれはひどく場違いな雰囲気を醸し出していた。
男はまるで吸い寄せられるようにその小ビンを拾う。自分でも何故拾ったのかすら分からないようだ。何か超自然的なものによって導かれたのだろうか。男はオカルトの類なんてこれっぽちも信じちゃいなかったのだが。
自宅に帰った男はその小ビンを眺めてみる。よく海外の映画でよく見る、海に流すメッセージボトルのような感じだ。
大きさも小ぶりでちゃんと栓までしてある。中身は・・・汚れていてよく見えない。しかし不思議なことに傷が一つもなかった。これだけ汚れているのに。何故だろう? いくら考えても答えは出ない。
まさか、栓を抜くと悪魔か魔神でも出てくるのだろうか、それとも何かを封印していたのだろうか?
まぁいい、オレには関係ないことだ。そう考えた男は栓を抜いた。と、突然辺りに漂う煙。咳き込む男、と、ふと気づけば目の前に一人の子供のような姿をした人物が立っていた、人物、と評したのは、その子供から発せられる雰囲気がまるで成熟した大人そのものだったからである。
それにその服装、それは現実世界では見たこともないような服装だった。そう、ゲームなんかではよく見るような、機能性よりもデザインを重視した服装である。
「だ、誰だオマエは!」
思わず叫ぶ男にゆっくりと言い聞かせるように答えるその子供。
「私は、妖精です。このビンに封印されてしまったのですが、偶然にもアナタがこの栓を抜いてくれたおかげで外に出ることが出来ました。お礼にアナタの願いを三つだけ叶えましょう」
「・・・マジで?」
「マジです」
男は目をこすり、二、三度首を振る。だが目の前の光景は変えようもない現実だった。
「じゃ、じゃあえっと、どうしようかな・・・?」
「だったら願い事を言ったほうがいいですよ」
悩む男に妖精はそっとささやく。しかし男はなおも悩んでいた。せっかくのチャンス、最大限に生かす言い願い事はないかと必死で若い頃に読んだ小説の内容を思い出そうとしていた。
「・・・何かいい願い事は・・・ないだろうか?」
「お金とか、美女とか、色々ありますよ」
「うーん・・・、よし、それじゃあ願いを増やして」
「それは無理です。昔それをやった知り合いがひどい目に会いましたから・・・」
そういうと妖精は悲しそうな顔をした。多分よほどのことだったのだろう。
「あ、ちなみに願いはあと一つですよ」
「へ?」
「だってさっき私に聞いたじゃないですか?
『どうしようかな?』
『いい願い事はないかな?』と。ちゃんと叶えてあげましたよね、お忘れですか?」
意地悪く妖精は言い放つ。あっけに取られる男、なおも続ける妖精。
「さぁ、早く最後の願いをお願いします、そして私を自由にして下さい」
「うぅ・・・」
男は悩んでいた、出せと言われれば逆に出ないのだ。いつもなら簡単に出るのだが。
「・・・よし、分かった。それじゃあ10分前に戻してくれ」
「10分前ですか? 分かりました、ではその願いを叶えましょう」
「あぁ、そうしてくれ」
そう言いながら男はあることを考えていた。
(馬鹿な妖精だ、10分前に戻ってもう一度願いを言えばいいだけの話じゃないか、全く、手間をかけやがって・・・)
そんなこととはつゆ知らず、妖精は何の疑いも持たずにその願いを叶えようとして何事かを呟く。突然部屋は光に包まれた。
そして話は10分前に戻る。
マンションの自分の部屋の中に男は立っていた。
「・・・? 何だろう、何か大事なことを忘れているような気がするなぁ・・・。そうそう、このビンを開けようとしたんだった」
男は栓を抜く。と、突然辺りに漂う煙。咳き込む男、目の前に現われるのはさっきの妖精。
「だ、誰だオマエは!」
「私は、妖精です。このビンに封印されてしまったのですが、偶然にもアナタがこの栓を抜いてくれたおかげで外に出ることが出来ました。お礼にアナタの願いを三つだけ叶えましょう」
「・・・マジで?」
「マジです」
「じゃ、じゃあえっと、どうしようかな・・・?」
「だったら願い事を言ったほうがいいですよ」
「うーん、何かいい願い事は・・・」
あれから果たして何年経ったのだろうか。いや、何年だなんてそんなことは男には全く分からないだろう。だって男にはまだ10分しか経っていないのだから。
こうして彼は今もずっと同じことを繰り返している。そう、何度も、何度も。
「うーん、何かいい願い事は・・・」
コメント
#コメント一番乗り
3つめの願い。「ビンに戻れ」
数年じっくり、願いを考えましょう。
数年じっくり、願いを考えましょう。
#
もしくは「消えてなくなれ、永遠に」ですかね。わざわざ感想ありがとうございます。
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Kaiさん、ブログ開設おめでとうございます! 僕の書いた困ったぐらい類似点のある「三つの願い」もどうぞ。
2006/01/15 (Sun)
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